F パーソナル・コンピュータ

F2 パーソナルコンピュータによる科学計測

はじめに

科学計測の分野でもパーソナル・コンピュータの利用は大いに進展している。 科学計測におけるパーソナル・コンピュータの利用形態は大きく分けて2通りある。

一つは F1 で経験したように、基本的には 1台のコンピュータが、各種の計測用ボードや制御用ボードをコンピュータ本体の内部に搭載していて、これらを直接コントロールする方式である。 この方式は、内蔵ボードが外部の計測機器に比して一般に廉価で経済的なメリットがある場合が多い。 しかしその反面、計測・制御用のプログラムをコンピュータ側ですべて用意しなければならないため、適当な既製ソフトウェアがない場合にはソフトウェア開発面でのユーザーの負担が大きいし、測定中や制御中はパーソナル・コンピュータがその作業にほとんど占有されてしまうという欠点もある。 また、システムの性能は用いるハードウェアの組み合わせ (パーソナル・コンピュータと内蔵ボード)で決まるため、ある目的には適していても別の目的には合わなかったりして、システムを組むときの融通性に乏しい傾向がある。

これに対してもう一つの利用形態は、計測や制御に関することはほとんどを外部の計測機器に任せてしまって、パーソナル・コンピュータはそれらの機器の状態設定やデータの転送、機器間のタイミングの調整など必要最小限の仕事だけを行うやりかたである。 この方式の場合、高度の仕事を行う計測機器は比較的高価であるのが普通で、限定された目的に対しては過剰な投資をすることになる。 しかし、計測機器とパーソナル・コンピュータとの間の通信方式が規格に則っている場合(ほとんどの場合そうであるが)には、ソフトウェア開発におけるユーザーの負担も少ないし、パーソナル・コンピュータも空き時間を利用して他の仕事ができる可能性もある。 このことはパーソナル・コンピュータの有効利用にとっては得策である。
(F2 パーソナルコンピュータによる科学計測 の実験装置)

結局、どのような方式をとるかはその目的による。 予算、人手、時間などとも相談して、どれが適切かを判断すればよい。 本実験では、研究室におけるパーソナル・コンピュータ利用の応用編として、パーソナル・コンピュータによる後者の利用形態の科学計測システムを経験してもらう。 と同時に、ディジタル計測と信号処理の分野で広く利用されているフーリエ変換の概念とその利用法の実際を実験を通して学ぶ。

参考書

科学計測におけるパーソナル・コンピュータの利用技術一般に関する参考書としては

[F2-1] 桜井捷海・霜田光一著 : 『応用エレクトロニクス』(裳華房,1984)
[F2-2] 南 茂夫 編著 : 『科学計測のための波形データ処理』(CQ出版社,1986)☆
[F2-3] 戸苅吉孝・津坂昌利著 : 『パソコン計測制御とインターフェース活用法』(技術評論社,1984)☆
[F2-4] 三上直樹著 : 『ディジタル信号処理入門』(CQ出版社,1989)
[F2-5] 小林俊一・櫛田孝司編:実験物理学講座3 基礎技術III 測定技術(丸善,1999)

などが役に立つ。


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