応用物理学実験(現「物理工学実験法」)のめざすもの


学生実験というと諸君のなかには、教師が準備しておいた装置を使って、ひたすら指示された手順に従って課題をこなし、教科書に書いてあるような測定結果が得られれば成功、そうでなければ失敗、というようなものを想像する人が多いかもしれない。 確かに、実験を行い、かつその結果を人に伝えるにはそれぞれ一定の作法(ことを効率的スムーズに行うための方法)があり、それを修得することは研究者に欠かせないステップである。 しかし、実際の研究においては、装置が初めから無いこともあるし、実験結果すなわち問題の答えもあらかじめ分かっていないのが普通である。 そもそも何が問題であるかそれ自身を自分で考えなければならないこともむしろ多い。 応用物理学実験では、必ずしもテキストに従った課題消化を期待していない。 予想どおりの結果が出ないときは、どこかで何か問題があったはずである。 これを単に失敗で片づけるのでは、研究者として失格である。 このようなときこそ、初めて問題に遭遇していると思うべきである。 これは実験家に限らず科学者をめざす諸君のとるべき態度であろう。 ダ・ヴィンチの言葉「理法無き結果は何一つ存在しない」を肝に銘じて欲しい。

名誉教授 前田 康二


応用物理学実験