物質の中には、外部磁場がなくても大きな磁化(物体の単位体積当たりの磁気モーメント)を示すものがあり、強磁性体と呼ばれている。 強磁性体は我々の身近でさまざまな用途に使われており、応用上きわめて重要な材料の1つである。 この実験では、強磁性体に“硬い”ものと“軟らかい”ものがあることを知り、応用上の観点からその特徴を考える。 一方、強磁性体には、温度を上げていくとある温度(キュリー温度)を境にして自発磁化を失うという特徴がある。 これは固体が液体になるのと同様な一種の相転移現象であり、強磁性体の基礎的な物性である。 さらに、このような自発磁化の温度変化は、例えば、最近光磁気ディスクとしてコンピュータの大容量外部記憶の用途に利用されるなど、応用的な観点からも重要である。なお、本実験テーマはF1で行うコンピュータシミュレーションの1課題(イジングモデル)と深い関連があるので、合わせて理解して欲しい。
強磁性体から常磁性体(外部磁場によって弱い磁化しか示さない物質)への変化の場合には、固体から液体への変化のように状態の変化に熱の出入り(転移熱あるいは潜熱という)を必要としない。 前者のような相転移を2次相転移、後者を1次相転移と呼んでいる。 光磁気ディスクでは、レーザー光を用いて微小領域の温度を上げ、磁性体の保磁力が低下した状態で外部磁場の向きを変えることにより、情報の記録と消去を行っている。 |
(C2 強磁性体 の実験装置) |