B 波動

B2 X線

はじめに

X線は電磁波の一種で、マクスウェル方程式に従う波動性と光子としての粒子性をもつという点では、いわゆる光波や電波と本質的には変わらない。 しかし、波長が10-3〜10nm程度で非常に短く、分子や固体を形成する原子間の距離はほぼこの範囲に入る。 更に光子として考えると、そのエネルギーが非常に大きいため、発生の手段が特殊であり、また物質との相互作用が他の電磁波とは異なることが多い。

この実験は、X線と物質との相互作用を通して、X線と光波などとの共通点、相違点を理解すると共に、原子的尺度で物質の構造を調べることを目的とする。 具体的には、X線を発生させて多結晶、単結晶の物質に照射し、回折現象を観測し、得られた回折像の解析を行う。

また、装置が高電圧源を有しており、しかも人体に影響のある放射線の一種である X線を発生するので、この様な場合に、いかに細心の注意を払って実験するかを知ることも重要である。 更にこの実験では、結果の解析に必要な写真の撮影・現像技術の習得も目指している。


(B2 X線 の実験装置)

Sコ−ス : デバイ・シェラー法で銅、タンタルの多結晶体からの回折像を撮影し、結晶格子の面間隔を測定する。
Rコ−ス : Sコースの課題に加えて、ラウエ法による単結晶物質の方位の決定も行う。

参考書

[0-0] 金原寿郎編 : 『基礎物理学』(下)(裳華房,1980)
特に本書の第26章(§26.6、§26.7を除く)程度の知識は是非もっていてほしい。
[B2-1] カリティ著 : 『X線回折要論』(アグネ,1968)
X線回折に関しては、多数の解説書があるが、あまり大部にならず、よくまとまった手頃な本として、本書を推薦する。 X線回折については、かなり幅広い知識を必要とするので、必要事項は本書から調べるようにすると便利である。
[B2-2] 有山兼孝他編 : 『構造解析、特殊実験技術』(共立出版,1967)
X線回折の基礎と構造解析法が要領よくまとめてある。
[B2-3] アザロフ著 : 『X線結晶学の基礎』(丸善,1973)

応用物理学実験
応用物理学実験/テーマ目次


experiment@exp.t.u-tokyo.ac.jp