光はよく知られているように、波としての性質と粒子としての性質を合わせもっている。 波動としての光の性質は、従来いろいろな物理的測定手段あるいは新しい工学的技術に利用されてきた。 特に、レーザーの登場は、単色性と可干渉性の格段に優れた光源という点で光学の分野に革命をもたらし、各種の分光学、光学物性研究、長さや時間の精密計測、光通信、ホログラフィ、レーザー加工、医療などきわめて多くの分野で応用されている。
このテーマでは、レーザー光を用いて光の波動としての特徴を示す2つの現象すなわち回折と偏光について実験する。 第1日目に行う回折の実験では、基本的な単スリットによる回折から始めて、その応用としての空間周波数フィルタリングについて学ぶ。 重要な点は、フランホーファー型回折パターンあるいはレンズを用いた回折パターンは、元の像の空間フーリエ変換になっていることである。 この性質を用いることにより、光コンピューティングと呼ばれる様々な興味深い情報処理が実現できる。 このテーマでは、実際にコンピュータを用いて同様の画像処理をシミュレーションし、観察結果と比較する。 | (B1 光波 の実験装置) |
第2日目は、偏光について調べる。 電磁波としての光はその電場の振動方向が光の進行方向に対して垂直な横波である。 その電場ベクトルがある方向に偏った光を偏光という。 通常の自然光では、様々な偏光成分が混ざっているため偏りは観測されないが、レーザー光などからは特定な方向に偏光した光が放出されるため、偏光板を用いればその偏光方向が容易に求められる。 また、波長板を用いれば、その偏光方向を変えたり、進行方向の周りで回転させたり、自由に制御できる。 このような偏光の性質は物性研究に広く利用されており、この実験では、その一例として、試料中の偏光性をもつ部分だけを選択的に観察できる偏光顕微鏡について学ぶ。
この実験テーマでは、「光の性質を利用すると様々なおもしろいことが実現できる」ということを実際に体験し、波としての光の性質を直感的に理解することに重きを置いている。 なお、レーザー光は目に入ると危険なのでその点は十分注意してもらいたい。